
話しが前後するが
ファラオラリーの二日目に熱中症になってしまった。
この日のSSは前半はガレ場が多く特にうちらがキノコ岩といった風化で頭でっかちで下がえぐれて細くなっている岩の間のフカフカのサンドの中を右に左に走らさせられるハードな設定だった。
とにかくここはしんどくかなりバテてしまった。
それでも150キロぐらい過ぎてからだろうかやっと脱け出しフラットな平原にでて「やった〜これで少しは楽ができる!」と思った矢先だった。
さきほどまでの難所でけっこう息が上がっていたのだが、どうも動悸がおさまらない、というかどんどん激しくなっている。
「あれ?おかしいな。まあ走っているうちに落着くだろう。」
と思い走り続けようとしたが、動悸は激しくなるばかりでしかも目の前が真っ白になってきた。
「ど、どうしたんだ?」とにかく少し休めば落着くと思いマシンを止め降りたのだが症状は一向に良くならない、そうしているとレーシングカミンオンが一台やってきてグッタリしているぼくが気になったのだろ下りてきてぼくに水のペットボトルとランチパックで配られたナッツの袋をくれ、塩分と水を取れと仕切りに言っていた。
そこでどのくらいだろう、かなり長い時間を休み少し動悸がおさまってきた気がしたので、マシンに跨り走りだしたのだが、数百メートル進むだけでフラフラになってしまう。
それを幾度か繰り返したあと、意識が朦朧としてきてとうとう走ることができまくなった。
またマシンから降りキャメルバックの水を飲んだり、非常用にもっていた飲むゼリーや薬を飲んだが症状はどんどんひどくなって気絶しそうになってきた。
しかもひどい寒気と吐き気もしてきた。
以前、熱中症になり鳥肌がでると30分で死ぬと言う話しを聞いていて
まさに今、自分がその状況なのだと思った。
「ま、まずい、このままでは死ぬ。早く救助を呼ばねば。」
と思いイリトラックのレスキューボタンを押そうと思ったのだが、これで押してしまったらリタイヤになるのでは?と思い押すのを躊躇してしまった。
しかし意識が遠のく中で「ダメだダメダ!早く押せ!命には代えられないだろう!」という心の言葉に促されボタンを押した。
だが、そのあと気を失ってしまい。良く憶えていないのだが、ハッと気がついたときに慌ててもう一度押してみた。
するとすぐにイリトラックのスピーカーから「どうした!クラッシュか?」という声が聞こえてきた。
ぼくは声を絞りだし「クラッシュしていないし、怪我もしていない。でも体が熱くとても疲れて動けない!」と言うと「わかった、すぐに救助に行くから待っていろ!」と答えが返り、そのあとのぼくはマシンの影に横たわりほとんど意識を失っていた。
それからまもなくヘリが飛んでくる音がすると思っていたら、いきなり頬を誰かがひっぱたき水を顔にかけられた。
てっきり車が来ると思っていたら、ヘリが救出にきたのだ。
そのあとはヘリに運ばれドクターの診察と手当を受けたのだが、スタッフが音がうるさいので筆談で「おまえを次のチェックポイントまで運び、そこから車で今日のビバークまで陸送する」と書いていた。
ところがパイロットがなかなかチェックポイントのスッタフの車をみつけることができず、結局ビバークまで直接飛ぶことになった。
このときのぼくは気持ち悪くて吐きそうなのを我慢していたので直ぐにつくと言われていたチェックポイントから遠いビバークに変更になり吐くのを我慢できるか心配になっていた。
それでもヘリから見える眺めはそれはそれは素晴らしいもので、特に砂丘群の恐ろしくも美しい景色は写真にとりたかったが、さすがにその状況ではカメラを取り出す元気はなかった。
そうこうしているとヘリのスタッフ達が急に笑いだしたので、なんで?と思っていると眼下に爆走するレーシングカミオンが見えた。
パイロットがぼくに速度計を指先すので覗くとメーターは150キロを指していたのだが、なんとそのカミンオンはどんどんヘリから遠ざかっていくのだ!
それからパイロットは170キロまで速度上げ、やっとカミオンと同じスピードになった。
ゲ!ということは、このカミオンは170キロで走っているということだ!
あとで聞いた話しなのだが、このカミオンは200キロまで出せるそうだ。
恐ろしやレーシングカミオン!
そうこうしているうちにやっとビバークに着き着陸すると、直ぐにメデカルカーで運ばれメデカルセンターに収容された。
そしてそこで点滴をなんと8本も打たれることになった。
点滴一本の容量がどくらいなのか分からなかったが、もし500CCだとすると4リットルの点滴を打ったことになる。
この話しをレイドクラスに日本人で唯一四輪で参加していた女性(H口さん、実は女医さん)
に話したら、4リットルだとすると点滴量としては最大限らしく、そうだとするとかなり危険な状況だったことになるそうだ。
(そんなに危なかったのだ)
ところで、これでリタイヤかと思っていたら、ペナルティの時間加算はあるがレスキュー3回まではレース復帰がOKと言われ、落ち込んでいたのに思わぬ制度に救われた気分になった。
振り返ればこの日の自分は準備を怠っていた。
とにかく暑いので熱中症にだけは気をつけようと初日は走る前から十分の水をとり、走行中もキャメルバックから絶えず水分を補給するようにしていた。
ところが初日は特に苦労すこともなく淡々と走るこことができたせいか、途中でオシッコをしたくなり、止まってトイレタイムをとるはめになってしまった。
このために二日目は走る前にあまり水分をとらず、走りだしてからもコースが厳しいこともあり、走ることだけで必死で水分を取ることを怠っていた。
自業自得とはこのことだ。
もし、ヘリがすぐに来てくれなければ自分は死んでいたかもしれないと思うと主催者の迅速なレスキュー体制に命拾いをした思いであった。


